お肉の調理のポイント「メイラード反応」を制御する方法について

お肉を美味しくするための調理法として「メイラード反応」をうまく使うと良いということが一般的になってきています。肉だけでなくお魚などを焼いたときにでる香ばしい香りは、食欲をそそるだけでなく味わいも一段深くなります。

今回は元有機化学者がしっかりとメイラード反応を制御する方法にお伝えしていきます。

メイラード反応に必要な物質とは

メイラード反応 パン

世の中の化学反応というのは原料が必要です。例えば、お水を作るなら水素ガスと酸素ガスが必要であるということ。このあたりは高校の授業でも習いますね。

お肉調理のメイラード反応にも、必要とする材料があるのです。必要とする原料は以下となります。

  1. アミノ酸
  2. 還元糖

アミノ酸はたんぱく質を構成する分子のことで、お魚、お肉、お豆腐などに含まれる成分です。もう一つの原料である還元糖とは、ブドウ糖、果糖、乳糖などを指します。フルーツの甘みやお砂糖、乳糖は牛乳に含まれる糖質になります。

つまり、加熱する段階でたんぱく質由来のアミノ酸と糖の成分があることがメイラード反応に必要な条件ということになります。

その他にもローストしたナッツ、コーヒー、焼いたパン、玉ねぎの傷めたものなどもすべてメイラード反応によってうま味をアップさせたものということになるのです。この反応が食事とは切り離せないことがわかりますね。

効率的に反応させるには

メイラード反応

メイラード反応によって香ばしい美味しさを感じられる料理になるけれど、うまく焦げを作れず困っているという方もいるかもしれません。

今回はより美味しくお肉やお魚調理をするためのポイントを紹介します。

最初に気にするのは原料がしっかりあるのか

焼き色が上手くつかない場合、まず始めに気にして欲しいのが使われる原料のどちらかが不足していることです。

もしお肉を焼くときに焦げにくいのであれば、糖成分を表面にまとわせるように加えたらよいのです。反応はその原料の濃度が濃いほどに反応速度が高まる傾向にあります。

スコーンやパンの外側に卵を塗って色をこんがり茶色にする手法が知られていますが、これは表面にたんぱく質を増やしてパン生地に含まれる糖成分との反応を促進したことで可能となっているものなのです。

反応温度もしっかり把握すること

反応の原料が足りていることが確認できたら、次に見る必要があるのが反応の温度です。

水素と酸素があっても反応がはじまらず、そこには火が必要というのと同様です。お肉と糖があったうえで、適度に高温状態にする必要があるのです。

温度が高いほど反応速度が高くなります。

ただ、お肉は加熱しすぎると燃焼してしまうのでこのバランスを取った加熱条件にしてあげることが重要です。

例えばレアのステーキのように中心にはかまり加熱をしたくないけれど、香ばしさを加えたい場合。表面だけに素早くメイラード反応を起こさせるために、いつもより高温で瞬時に焼きを入れればよいということになります。

逆に高温にすると硬さが出るので難しいという場合には、低温でたっぷり時間をかけて色づけてあげれば最終的なうま味の量はコントロールできます。

水分の制御で食材の分解をコントロール

メイラード反応に直接は影響しないが、水分も重要なポイントとなります。

この水分はたんぱく質やデンプン質の分解反応に作用するのです。たんぱく質がアミノ酸に変化するとき、その原料に水を必要とするのです。これを加水分解といいますが、お肉にしっかりと水分がある状態にすることによって最終的に得たいこんがり香ばしいお肉になるのです。

ただ、湿って濡れている食材では、焼いても温度が上がりにくくなってしまいます。少なくとも表面のお水はふき取って焼き始めると良いでしょう。

酸性度(pH)でメイラード反応の速度を調節

化学反応というのは、温度以外にも環境の影響を受けることがあります。

例えば上で説明した加水分解も、中性では起こりにくいとされている反応です。そのため、加水分解を起こさせたい場合には原料に応じてですが、酸性やアルカリ性にややpHを調整したところで行うのが良いとされます。

メイラード反応の場合には、アルカリ性の方が反応が速いです。

つまり、重曹や卵白などのアルカリ性になりやすい調味料を加えることで、香ばしいうま味を付けられるということです。

間違えやすいカラメル化とメイラード反応

メイラード反応と同じ条件でも、温度によっては糖質がカラメル化するという反応が優先される場合があります。

カラメル化は糖の変性になるため、カラメル化した糖はアミノ酸と反応できずにうま味が上がらなくなってしまいます。上手く焼き色が付いたと思ったけれど、苦いだけで美味しさにつながっていないという方はカラメル化を疑ってください。

ちなみにカラメル化が優先される温度は190℃だと言われています。揚げ物をするときに油の温度が170~180℃を狙うことが多いのも、苦味を出さずに香ばしくするためなのですね。

 

是非メイラード反応を化学的な考えでコントロールして、自宅でも美味しいご飯を作ってみてください。

メイラード反応
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